English version is here.
共同体の刷新の可能性:個人と教会を変革する
(編集部注、リバイバルには日本を含めたキリスト教史上さまざまなイメージや定義がありますが、ここではケラーに倣い、「刷新」と「リバイバル」を同義で使用します。)
キリストに従う者として私たちは、衰退していく文化とその物語に対する単なる傍観者に過ぎないのでしょうか。それとも心だけでなく、私たちのコミュニティをも変革するような信仰の刷新、つまりリバイバル運動を起こすことができるのでしょうか? その鍵は、福音はただ個人にのみ響くメッセージではなく共同体の刷新をも促す、という事実にあります。本記事では、個人における福音による刷新が、どのように教会を活気づけ、その変革へとつながるかを考察します。
福音による刷新を理解する
福音による刷新の中心にあるのは、イエス・キリストのメッセージがもたらす変革力です。個人の刷新は、私たちの心の傾向と、私たちを神から引き離す偶像礼拝的な傾向を深く理解することから始まります。福音は、私たちに悔い改め(使徒 3:19)を求め、真の美、価値、喜びはキリストのみにあると認識するよう呼びかけます(ピリピ 3:7-8)。しかし、この刷新は個人の経験のみで終わりません。それはキリストのからだ全体を活気づけるという、共同体全体への影響につながります。ティモシー・ケラーはそれを以下のように適切に述べています。
「『全体は部分の総和よりも大きい』ということわざは、人間の共同体の中でも特に教会においてより一層当てはまる。」
教会は、単に個人の集まりではなく、生きた有機体、すなわちキリストのからだです(1コリント12:12)。個人が、福音によって変革され恵みを経験すると、その人生は神の働きの証となり、教会共同体全体の活力に貢献します。この相互に強められる関係は、個人の刷新が共同体のリバイバルを促す、強力なダイナミズムを生み出します。
リバイバルの歴史
私たちの共同体における刷新の要素を理解するためには、聖書と教会史の両方に目を向ける必要があります。聖書や様々なリバイバル運動を通じて繰り返し見られる共通する要因を分類すると、神学的、霊的、構造的、宣教的、関係的という5つの主要な領域に分けられます。
神学的な刷新:福音の再発見
リバイバルは多くの場合、福音の回復、すなわち、私たちの神に対する理解と、神に対する体験の両方を変える、恵みの再発見から始まります。人間の心の初期設定は、律法主義や道徳主義を通して自己救済を目指します(ガラテヤ 3:1-3)。ですから本当のリバイバルは、自分たちのためにキリストが成し遂げた業の根本的な性質を把握する時に起こります。この神学的な理解における覚醒は、神の恵みに対する新たな理解(ローマ人への手紙5:8)を伴い、深い謙遜と神の愛への喜びに満ちた確信(ローマ人への手紙8:15-17)へと導きます。
さらにリバイバルは、現在の文化の潮流を取り入れた新しい形、文脈に応じたミニストリーによって特徴づけられます。産業革命の時代に、初期のメソジスト教徒たちが野外での説教というアプローチを採用したように、現代の教会も、地域社会のニーズにクリエイティブに対応し、現代社会に対して表されるべき福音を示さなければなりません。
霊的な刷新:祈りと礼拝の役割
リバイバルは、特別な祈りや、活気あふれる礼拝と深く絡み合っています。初期の教会は祈りに専念しました(使徒の働き2:42)。歴史上どのリバイバル運動も神のみを共に求める献身を特徴としてきました。この祈りは、個人的な必要のリストではなく、悔い改め、刷新、失われた者の救いを求める王国中心の叫びです(歴代誌下7:14)。
さらに霊的な刷新は、謙遜と喜びに特徴付けられた、礼拝における感情的な高まりにつながることがよくあります。例えば、韓国のリバイバルは、公の告白と神の臨在を共同体として体験しました(詩篇 51:10-12)。個人が生ける神と出会うことで、その人生は生きた証しとなり(2コリント 3:2-3)、他の人々を教会共同体へと導くのです。
構造的な刷新:小グループと一般信徒のリーダーシップ
歴史的にリバイバルでは、より深いコミュニティとアカウンタビリティを促す小グループが出現してきました(使徒 2:46)。そのようなグループは多くの場合、信仰の旅路で励ましと支援を願う、リバイバルを経験した個人によって自発的に形成されます。さらにリバイバルは、万人祭司を強調し、一般信徒のリーダーシップを促します(1 ペテロ 2:9)。この変化により、ミニストリーへの参加が可能になり、すべての会員が教会生活において役割を果たす文化が育まれます。
宣教の刷新:宣教と社会正義
リバイバルは組織化されたプログラムではなく、信徒による活発な伝道活動が著しく増加します。東アフリカのリバイバルは、力づけられた信徒が自発的な伝道活動に従事し、驚くべき教会成長をもたらした一例です。リバイバルの宣教的側面は社会正義にも及び、刷新された共同体は、キリストのあわれみの心を反映して、疎外された社会層の擁護者となります(ヤコブ1:27)。
福音に対する新たな理解は、信徒たちに社会正義の行動と、思いやりや愛を促し(ミカ 6:8)、具体的な社会改革へと導きます。歴史上のリバイバルは、奴隷制度廃止運動や貧困層支援活動などの運動のきっかけとなることが多く、真の信仰が宣教と行動の両方で現れることを示しています。
関係性の刷新:包括的なコミュニティの構築
リバイバルを経験した教会は、宗派や文化の境界を越えた人間関係を育みます。歴史的なリバイバルにおいて様々な教派間の団結と協力は、信徒たちを結びつける福音の本質(エペソ4:3)を浮き彫りにしています。リバイバルが起きている時代、教会は人間関係が豊かに深められる場となり、違いがあるにもかかわらず、相互の学びと励ましが可能になります。
さらに、福音によって刷新された共同体は、信仰を持たない人も歓迎され、尊重される包括的な環境を作り出します。この「中間的な空間」は、懐疑的な人々も自分がどう見られるかという他者の判断を恐れることなく信仰を模索できるよう誘うものであり、キリストについての真摯な対話を促すものでもあります(1 ペテロ 3:15)。信徒は、真理について妥協することなく、キリストの愛を体現することで、他の人々を福音による変革の力に引き寄せるのです。
刷新への呼びかけ
以上のような教会の刷新につながる要素について考えるとき、当然以下のような疑問がわきます。「個人の福音による刷新が、具体的にはどのように共同体の刷新を生み出すのか?」 教会が集団として福音を再発見し、再認識すると、多くの場合以下のような3つの重要な結果が生まれます。
名目上のクリスチャンの回心:自分がクリスチャンだと思っていた多くの人々が、福音を真に理解していなかったことに気づき、真の信仰と変容に至る。
霊的に枯渇した信徒の成長:信仰において停滞していた人々が、神の愛と恵みの豊かさを体験し、新しい命に目覚めます。
信仰を持たない人々を惹き付ける:福音中心の共同体の美しさと真実さが、懐疑的な人々や探求者を惹きつけ、信仰についての意味ある対話の機会を生み出します。
希望と癒やしを切実に必要としているこの世界において、教会は重要な役割を担っています。力強いリバイバルは、私たち一人一人から始まります。それを認識し、福音の核心を反映するような個人の刷新を願いましょう。神が私たちの人生を変革し、それを用いて教会に新しい命を吹き込んでくださることを信じ、まずは一人一人の福音による刷新を誠実に求めるのです。
実践的なストーリー:
ある教会では、礼拝後にその日のメッセージについて語り合い、過去一週間を振り返り、それをどう自分の生活に適用していくかを話す時間がありました。互いをよく知るための良い時間ではありましたが、男性グループでは、会話は表面的で無難な話題だけで終わってしまうことが多くありました。日本ではよくあることですが、他人の目を気にして、誰も自分の本音を語ることに安心感を持てない人が多いのです。日本の社会では「安心・安全」が非常に重視されますが、それが多くの場合、正直になることさや弱さを共有するといった価値を軽視する傾向にもつながっています。
しかしその教会には、自分の安心の土台を「他人からどう見られているか」ではなく、「イエス・キリストにある恵みと平安」に見出し始めていた男性がいました。その恵みと平安ゆえに、彼は自分の家庭の問題や感じていたストレスについて、正直に語り始めたのです。彼にとってはもはや、自分がどう思われるか、あるいは思われたいかよりも、そのような弱さを隠して生きることは福音に歩み始めた自分らしさを抑圧することであり、むしろストレスになることだったからです。
彼の話を聞いた後、そのグループでは彼のために共に真摯に祈り合い、励まし合う時間を持つようになりました。またそのような裏表のない正直な彼の姿勢に応答して、一緒に参加していたメンバーも促され、自分の弱さを素直に話したり祈ってもらう時間を持つようになりました。そのようにして、グループに参加するメンバーの姿勢が少しずつ変わっていきました。礼拝後の交わりの時間は以前に比べて、メンバーがより積極的に参加し、互いの素直さを受け入れ合い、祈って神様に委ねられる場所へと変えられていきました。
著者:CTCJ共同執筆チーム
2025年よりCTCJでは新しい試みとして、日本の都市開拓伝道の分野でのソートリーダーを目指すことをビジョンとして掲げました。共同執筆チームはその試みの一つです。主にスタッフを中心とし、多様な背景を持つ複数の執筆者・編集者が協力し、福音を土台、また中心とし、教会開拓者に役立つトピックに多角的に取り組み、一つの記事をまとめるチームです。