ジェイ・カイルを偲んで

リディーマー・シティ・トゥ・シティ、グローバル部門副部長、アジア、南米地域統括責任者であるジェイ・カイル氏が19日急逝しました。過去何回も来日、日本の教会開拓者を教え励ましてくださいました。以下は氏を偲んでティム・ケラー師がRedeemer CTC HPに寄稿したものです。

1977年、バージニア州の私たちの小さな教会は初めて宣教会議を開きました。その会議で22,000ドルという、私たちにとっては莫大な献金が集まったので、アメリカ長老教会の宣教部門ミッション・トゥー・ザ・ワールド(MTW)に連絡し、「もっと多くの宣教師を支援したい」旨を伝えると、ジェイ・カイルとモーリーン・カイルを紹介されました。

その頃、ジェイはSIMA(Servants in Missions Abroad)という短期宣教師を派遣するプログラムを運営していて、それは当時としては非常に斬新な試みでした。ジェイとモーリンが教会に来てくれてジェイが話すと、皆が彼を気に入り、私たちの教会は彼らに年間1,200ドルという額を献金することに決めました。また、カイル夫婦と私たち夫婦の間にはその後長く続く友情が芽生えました。

ジェイと私は、私たちがバージニアからフィラデルフィアに移ってからも連絡を取り続けていました。彼が転職を考えているとき、私たちのところに泊まりに来たこともありました。その時ずいぶん長く話し合ったのを覚えています。数年後、私たちがリディーマー長老教会を始めてから、テリー・ガイガーが「リディーマー教会開拓センター」(後のシティ・トゥ・シティ)の土台を築いている頃のことでした。テリーは宣教師を二人必要としていました。必要とされていた宣教師というのは、自分では教会開拓しないけれど、他の国に出向いて将来の教会開拓者となる人を見つけ出し、採用し、まだほとんど福音が届いていない世界の都市で創造的にまた効果的な教会を彼らが始めるのを助ける役割を担う人でした。それだけでなくその開拓者がクリスチャンとしても牧師としても成長するように監督し、コーチし、愛し、指導できるような、異文化適応と人間関係のスキルをもった宣教師でした。このようなことを父権主義やアメリカ的な優越感をまったくもたずに行い、セルフスターターとして、資源もほとんどない中で働きを始めなければなりませんでした。テリーが「ジェイ・カイルにやらせるのはどうだろう」と言ったとき、「いい考えだ」と私は200%賛成しました。彼ならできると思ったからです。

こういうわけで、ジェイはアジアとラテンアメリカで、共同開拓者のアル・バースはヨーロッパ、アフリカ、中東で活動することになりました。シティ・トゥ・シティ(CTC)の驚くべきグローバルネットワークは、世界中で何百もの新しい都市型教会を生み出し、それはまさにジェイとアルの個人的な宣教活動から発展していったのです。彼らの功績は驚くべきものでありながら、ほとんど知られていません。もしCTCの創始者は誰かと聞かれたら、テリー・ガイガーと答えるべきでしょうが、テリーのやり方は極めて優秀な人材を採用し、それを厳しく管理することなく「自由にさせる」ことでした。そういう意味ではジェイとアルもCTCの創始者と言えるかもしれません。彼らの働きなくして今のCTCは存在しません。

ジェイはその卓越した人間関係のスキルで有名でした。彼には人並外れた励ましの才能がありました。その恩恵は我が家の誰もが一度は受けたことがあります。今週私の息子の一人がふと言いました。「ジェイは今まで会った人の中で一番親切で、一番肯定してくれる人だった」。彼の言う通りです。ジェイはまた、驚くべき異文化適応能力の持ち主でした。彼自身、「宣教師の子供」として育ち、さまざまな社会で生活した経験があるので多様な文化的環境に完全に適応し、あらゆる種類の人々と友情を築くことができたのです。私たち家族は何度も彼と一緒に世界中を旅しましたが、彼はいつも知識豊富なガイドでした。彼は、地理、人口統計、文化、主要人物に精通していました。私たちがどこにいても、彼はあらゆることに備えがあるようでした。彼はまさに「世界市民」だったのです。

ジェイはまた、今までに会ったことのないような働き者でした。良心的で、忍耐強く、どこまでも努力家でした。うまくペースを落とす、という点では賢いとは言えなかったかもしれません。しかし彼の情熱は、世界の教会、大宣教命令、神の王国のためにありました。そういうことが彼をわくわくさせ、喜びの源でした。彼は神の国の働きのために新しい場所を開拓すること、教会が新しい方法で築き上げられることを考え計画することが好きでした。革新的なことを愛していました。ジェイとのブレインストーミングは、いつも爽快なものでした。

彼のビジョンと愛、そして声や笑いは何にも代えられません。サラ・エドワーズは、夫のジョナサンが亡くなったことを知ったとき、娘に手紙を書きました。「私たちが彼とこんなに長くいられたのは神のおかげです」。さらに「あなたの父が残した遺産はどれだけのものでしょう」と続けました。私は今日、ジェイ・カイルについてそんな風に思っています。長い間、彼と一緒にいられて本当によかった。できればもっと長く一緒にいたかった、でもそれは神のみが知ること。そしてこうも思うのです。どれだけのものだろう、彼が残した遺産とは!

著者:ティム・ケラー(CTC共同創設者)

ニューヨーク市でリディーマー長老教会を開拓。ニューヨークタイムズのベストセラー、「The Reason for God」「Prayer」著者。世界各国で380以上の教会開拓に協力したNPO法人リディーマー・シティ・トゥ・シティ理事長。 妻キャシーとニューヨーク市在住。

ジェイさんのご家族の意向により、お志のある方は献花の代わりにRedeemer City to Cityにご寄付をお願いします。