“100%カフェ、100%教会"

 昨年末、アリステア・チウ(City to Cityの信仰と仕事のカタリスト、アジア太平洋地域担当)夫妻がカフェThe Bridge を併設するヒズ・プレゼンス・チャーチを訪問しました。この教会を開拓した橘直己・ひろ子夫妻はCity to City Japanが2022年に京都で開催した日本インテンシブトレーニングに参加されました。(直己さんによる記事ひろ子さんによる記事)

アリステアさんが今回の訪問を振り返って寄稿してくださいました。

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 私たち夫婦にとって、昨年12月の関西旅行のハイライトは、日曜日に京都のヒズ・プレゼンス・チャーチを訪問できたことでした。ちょうど近くのホテルに泊まっていたので歩いて20分ほどで行くことができました。

 第一印象は、なんて素晴らしい空間だろうということでした。広々とした居心地のいい雰囲気の室内は2つの部分に分かれています。入り口に近いフロントエリアはカフェのカウンターとキッチンスペース、奥は教会の礼拝が行われるためのスペースで、テーブルと椅子が置かれていました。そこでは何人かが音楽を演奏したり、おしゃべりに花を咲かせていました。驚いたことに2つのエリアの間には壁がなくオープンフロアなのに、それぞれが自己完結しているように感じられました。奥で音楽が流れていても、フロントエリアにいるカフェのスタッフとの会話を邪魔するほどではありません。同様にコーヒーを淹れたり、厨房で動き回ったりしているスタッフも、教会の礼拝を邪魔することはありません。壁に吸音材が使われているのかもしれません。

 私はラテを注文し(乳糖不耐症の私には、オートミルクという選択肢があったのが嬉しかった!)座って礼拝を待ちました。接客は温かくフレンドリー、英語と日本語の両方で、地元の人たちと外国人たちがバランスよく集まっています。私たちは小グループでのディスカッションとその後の昼食のために残り、そこにいたほぼ全員と話すことができました。

 直己牧師にこの教会の理念と方法論について聞いてみると、こういう答えが返ってきました。「The Bridgeは『100%カフェであり、100%チャーチ』」。コーヒー好きを自称するオーストラリア人の私はラテを一口飲んで、いい豆を使ってプロが入れた本格的なコーヒーだとすぐわかりました。「今まで行った教会併設のカフェで出されるのはほとんど平凡なコーヒーで正直がっかりするものばかりでしたよ」と言ったくらいです。ですからカフェと教会のそれぞれのクオリティーを維持するために彼らが並々ならぬ努力を払っていることがよくわかりました。

 そこで彼らのその方針が実際の宣教に役立っているのかどうかを聞いてみました。直己牧師は2つのエピソードを教えてくれました。ひとつは、シンガポールから来たあるお客さまがカフェでコーヒーを飲んでいた時のこと。彼は教会とカフェのコンセプトに興味を持っているようでした。数週間後、地元の女性が教会に現れました。彼女は友人の友人、つまりあのシンガポールからの訪問客が、この地域にカフェ兼教会があることを教えてくれたと言うのです。

 直己牧師は「 もし私たちが本物のカフェでなかったら、あのビジネスマンが私たちのこの場所に来ることはなかったでしょうし、ここで仕事をすることはなかったでしょう。ましてや友人たちに教会のことを話すこともなかったでしょう。」それで彼女は興味をもって訪ねてきたのです。そして、カフェだけでなく実際に本物の教会だったからこそ、教会につながり、交わりに加わることができたのです。

 もう一つのエピソードを話すときに、直己牧師がカウンターを指差しました。教会の礼拝後、ある女性スタッフがカウンターに座って談笑していました。それを見ながら直己牧師が「うちのスタッフにはクリスチャンもノンクリスチャンもいます。でも一緒に働いて配慮し合うことで、お互いを知り、いろんな話や思いを分かち合っています。こうして福音が共有され、教会が成長するんです」

後列左端が著者

 私は思わず、「この教会は信仰と仕事の原則を体現しているのですね」と言いました。教会と職場の間に見られるような聖俗の壁を取り払われているかのようです。文字通り、礼拝の場所が職場そのもので、逆に言えば、職場に礼拝の場所を運び込んだとも言えます。と言うのも、教会の礼拝が行われている間、カフェは閉店することなく、その奥で教会の礼拝が行われているからです。こうしてカフェと教会をオーバーラップさせることで、外部の人が気軽に教会に来て礼拝を経験することができているのです。

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 City to City Japanの主な働きの一つに信仰と仕事というテーマがあります。どうしたら教会開拓者や牧師が、信仰と仕事を神学的に捉え、自分も含め信徒にその日常的な実践を教え導くことができるのか。そういったことを深く考える機会を提供したいと願っています。地域という文脈の中で、クリスチャンにとって自分の信仰と仕事が乖離せず、むしろ統合されていくことを目指し、様々な学びの機会やツールを提供しています。このトレーニングにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。

著者:アリステア・チウ  Alistair Chiu

イギリス生まれ、オーストラリア育ち、経済学を学び働いた後、教会で働くように。2013年に香港に移住、教会、NGO、教育セクターで働く。フラー神学校で聖職博士課程を修了し、信仰、仕事、経済、召命のつながりを探求することに重点を置いている。シャティンのニューシティ教会で臨時牧師を務める傍ら、過去4年間、香港全土で仕事と信仰の統合に関するワークショップやコースを開催してきた。ミッション・ワーク・フェローシップは、彼の博士課程での研究とミニストリーの経験の集大成であり、労働者が職場で信仰をもっと実践できるための方法を示し、香港のどの職場でも神の国が垣間見えるようになることを目的としている。